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しばらく歩いて行くと、ゆっくりと霧が晴れていった。
目の前に初めて、霧以外の光景が現れる。
そこは落ち着いた佇まいの、大きな神社らしきものだった。
らしきと言うのは、少し不思議な形をしているからで。
赤い鳥居ではなく、黒い鳥居で。
その先には、上に続いているであろう石段が見えているが。
上の方は未だ霧で隠れて見えない。
石段の横には樹齢何百年もあるだろうという、巨大な木々が立ち並んでおり、所どころ石灯籠が立っていて、灯された明りで転ぶことはなさそうだが。
…黒い鳥居か。
しかも、漆で塗ってあるのか、美しい漆黒の鳥居で。
艶々としたその佇まいは、まるで今作ったばかりのようにも見えて。
そこを潜る事を躊躇わせた。
しかし、振り向いて見ても霧が全てを覆っていて。
自分が歩いてきたところさえ、分からない。
今、見えているのは、この大きな鳥居だけ。
この先も少しは見えているが、この存在感の前には、見えていないようなものだ。
息を整えてから、潜ろうと鳥居の下に来ると。
目の前に、金色の文字が浮かび上がった。
それはまるで、境界の様に、鳥居の真下の空中に浮かんでいる。
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