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その美しい金色の文字は、こう告げていた。
”この先に進む者、いかなる咎を負うても、不問なり。”
…進むのを止めさせるには、十分だな。
そう思って、金色の文字をまじまじと見つめる。
煌めく文字は、本物の金のように周りの景色を映し込んでいる。
字が変わることはなく、空中に浮いていて。
此処を越えたら、何があっても自己責任という事か。
腕を組んでしばし考える。
…良い案なんて、浮かぶはずもないか。
先に進むしか、本当に道がない。
後は霧の中に戻るだけだが、その先に、ここよりいい場所がある保証もない。
何よりも、この場所が何処だか分からない以上、最初に着いた鳥居を、何かのご縁だと思う方が良い気がしてきた。
行くか。
浮いている文字にぶつかるように、入っていく。
眼前に見えた金色の文字は、空気に融けて消え、見事に無くなった。
石段をゆっくりと登っていく。
随分、上ったなと思った時、微かに風が吹いた。
気持ちのいい涼しい風で、汗ばんでいた身体を冷やしてくれる。
この先は、境内のはずだ。
神社の造りなら、多分そうなのだが。
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