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私達は口を開かず、
静かな車は穏やかに進んだ。
すぐそばにある、
室井樹の両手を見たくなくて、
私は、ずっと、窓に顔を向けていた。
住宅地を離れ、
工場地帯を抜けて、
車が、海の上の道路を走り始めた。
窓の外は、
キリンみたいな黒いシルエットと、
きらきらと輝く民家の明かり。
どこからが空か海か分からない濃紺の世界。
左右にお祭りのぼんぼりの様な、
丸い黄色い明かりをつけた道路は他の車は居ない。
そんな景色を眺めていると、
私の頭は、どんどんぼんやりしてくる。
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