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「ルッチが、泣いている」
うすぐらい母屋に、黒衣のおんながひとり。
東の空から、なにかがふわふわと飛んでくる。
―――カエルだ。
カエルの目頭が熱くなっている。そっとおんなの腕に乗って抱きついた。
「ルッチ、ごめんね、コワいおもいさせちゃったね」
おんなは、鈴をころがすような澄んだ声で、カエルの頭をすりすりとなでた。
「あのおじいさん。やるんだね」
もうすこし、計画練り直したほうがいいのかも。
母屋を出ると、盛りあがった土を一瞥した。
「ごめんね、ひでり神さん。でもあなたのおかげで、すこーし、わかったよ」
土には、ひでり神の杖(つえ)が、突きたててあった。
「ルッチ、食べた“もの”って、吐き出せないんだよね」
カエルは肩にのりながら、澄んだひとみで、ずっとおんなをみていた。
―――消化しちゃうもんね、ダメだよね。
おんなはため息をひとつし、深い森の奥へと消えていった。
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