第53話 【四凶《しきょう》 アカギ】

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    「ニンゲンどものちからは借りぬ。事実であれば、わしら【天狗界】が始末するだろうからな」 天狗界とは、人界にも妖界にも存在する【異界】のこと。 天狗界には、“彦山(ヒコヤマ)”という地があり、それを統率するのが八大天狗がひとり、『豊前坊(ぶぜんぼう)』である。 背がデカく、黒づくめのスーツをまとい、組んだ足は長く細い。 蓄えられたヒゲと、長い鼻。 「四凶(しきょう)の勢力も、気になる」 「大江山(おおえやま)の“せがれ”とやらが、ふたたび異剋顛を再興したときくが?」 「『外道丸(げどうまる)』とかいう小僧のことだろう?」 「鬼の動きは―――これからも活発になるじゃろう」 「ところで、冥界からあらわれた妖怪どものことだが」 タヌキはひげをなでる。 「まさか“あやつ”が生きておると?ふん、どうせ流言蜚語(りゅうげんひご)のたぐいじゃろうて」 「しかし、ありえん話でもあるまい。現にあやつの“一族(いちぞく)”も、すでに蠢(うご)きだしておるときいた」 「あやつとは―――なんのことだ?」 「ニンゲンじゃろう。情報収集は得意じゃろうて」 「元ニンゲンのおまえに言われたくはないがな、高慢テング」 「ほざけ。『狗賓(グヒン)』どもには、ひきつづき情報収集を命じておこう。 「ところで、“大僧正(だいそうじょう)”のすがたが見えねェが?」 フィクサーXは、コーヒーをひとくちすすった。 「“大僧正”は、御身体の具合がおもわしくないゆえ・・・」 ―――会議を御欠席なされて、はや300年―――心配ですなァ。 もうひとりの妖怪が、おだやかに笑いながら、そういった。  
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