悪夢の始まり

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…とにかく、とにかくアリバイを作らなきゃ! …誰でもいい、今、この時間に私と一緒に居たと証言してくれる人物、場所、とにかく誰か探さなきゃ!! 車はホテルを出て、忘年会が行われた金山へと向かっていた。 「そのまま二次会に合流したらまずいのか?」 重苦しい沈黙を、和馬が破った。 「それは不自然だよ。ミチルの誘いを翔太に会うからと断っておいて、翔太とミチルの電話の後に戻るなんて…」 「実は、違う病棟のナース達と飲む約束してて、嘘ついてそっちに行ってたとか」 「うん…それも考えてた。さっき、違う場所で二次会してる後輩に飲んでる店を聞くメール入た。その店に合流しちゃえば何とかなると思う」 後は、その煩い店内で翔太に電話をかければいい。 ご機嫌な酔っぱらいを演じ、携帯の音も聞こえない状態で騒ぎ続けていたと思わせればいい。 バカ面でジョッキ片手にピースサインの写メを送り、その店のマッチかコースターか会員入会の案内か、何でもいい。 その店にいた証拠品を然り気無くバッグに忍ばせればアリバイが成立する。 院内の職員と飲むのに、彼氏の名前まで使って親友に嘘を付くのか? 夕方の電話でなぜ唯と飲むと言ったのか? この状況で、いくら言い訳を考えても全て曖昧で、完璧なものなど思い浮かぶはずがない。 唯とミチルには全部打ち明けるしかない。 とにかく、今は曖昧な言い訳でも突き通し、切り抜けるしかないんだ! 緊張感で呼吸を忘れていたのかと思うほどに、口内は乾ききって息苦しくなる。 メールに残されていた文字を見つめ、恐怖で身を縮めた。
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