悪夢の始まり

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「今日は帰るの夜中だろ?」 電話の向こうで翔太が言った。 「うん。もしかしたら朝帰りになるかも」 携帯を肩と耳の間に挟み、桜色のマニキュアを塗りながら言葉を返した。 「また唯ちゃんとミチルちゃんと、5次会くらいまでハシゴするんだろ」 「そうそう、年に一度の忘年会!ぶっ倒れるまで飲んで来るわ」 「お前が潰れてその後始末すんの唯ちゃんなんだから、あんまり迷惑かけんなよー」 翔太が呆れた様にため息をつく。 「大丈夫、大丈夫。あいつ私の世話すんの馴れてるから。あっ、でもこの前唯の車の中で吐いた時はさすがに怒ってたわ」 ケラケラと笑いながら、マニキュアで彩られた手をかざし軽く息を吹き掛けた。 「そりゃ怒るだろ。お前よく唯ちゃんに見捨てられないよな。ところで、どの辺りで二次会すんの?」 「んー・・・まだ分かんない。翔太は?翔太も遅いんでしょ?一次会は名駅の近くだっけ?二次会からは錦辺りに移動?」 唯と自分の行動の話を切り上げようと、翔太に問いで返した。 「そうだな。錦通り沿いで朝方まで飲んでると思う」 「そっか。じゃあ、お互い朝まで飲み明かすって事でー。風俗のお姉ちゃんに宜しくね」 「だから、風俗は行かないって言ってるだろ」 電話の向こうで、翔太が口を尖らせるのが想像できククッと喉を鳴らし笑った。 「帰ってきたらメール入れておくね。覚えてたらだけど」 「酔っぱらってるお前には何も期待してないよ。じゃあ明日な、俺もそろそろ店に着くから」 そう言うと、翔太は電話を切った。
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