悪夢の始まり

3/19
前へ
/20ページ
次へ
12月の第2金曜日。 運の良いことに、翔太の会社と病院の忘年会が重なった。 翔太は、私が病院関係者と飲んでいる時は、絶対と言って良いほど電話はして来ない。 連絡があったとしてもメールだけ。 私の酩酊状態がどんなものかを知っているだけに、返信も期待していない。 しかも自分も飲み会となれば、私の行動を気に掛けはしないであろう。 机に置いた携帯電話をじっと見つめる。 「翔太は朝まで栄か…大丈夫だな」 ぽつりと呟くと、目の前の小さな置き鏡の前にメイク道具を並べた。 毎年、金山のホテルの大ホールを貸し切り行われる、病院忘年会。 会場には豪華な料理がずらりと並び、舞台では病院関係者達が各部署毎に歌って踊ってのパフォーマンスを披露する。 私はそれらの姿を眺めながら、大好きな白ワインと美味しい料理を楽しんでいた。 「えー、ご出席頂きました皆様のご協力をもって…これをもちまして、忘年会をお開きとさせて頂きます」 司会者が、宴の終わりを告げる挨拶をしている最中。 「綾子、綾子。二次会は今年も地下のラウンジだって。その後は、駅付近の居酒屋に移動するから」 ミチルがほろ酔い気分で頬をピンクに染め、帰り支度をする私に耳打ちした。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

406人が本棚に入れています
本棚に追加