406人が本棚に入れています
本棚に追加
12月の第2金曜日。
運の良いことに、翔太の会社と病院の忘年会が重なった。
翔太は、私が病院関係者と飲んでいる時は、絶対と言って良いほど電話はして来ない。
連絡があったとしてもメールだけ。
私の酩酊状態がどんなものかを知っているだけに、返信も期待していない。
しかも自分も飲み会となれば、私の行動を気に掛けはしないであろう。
机に置いた携帯電話をじっと見つめる。
「翔太は朝まで栄か…大丈夫だな」
ぽつりと呟くと、目の前の小さな置き鏡の前にメイク道具を並べた。
毎年、金山のホテルの大ホールを貸し切り行われる、病院忘年会。
会場には豪華な料理がずらりと並び、舞台では病院関係者達が各部署毎に歌って踊ってのパフォーマンスを披露する。
私はそれらの姿を眺めながら、大好きな白ワインと美味しい料理を楽しんでいた。
「えー、ご出席頂きました皆様のご協力をもって…これをもちまして、忘年会をお開きとさせて頂きます」
司会者が、宴の終わりを告げる挨拶をしている最中。
「綾子、綾子。二次会は今年も地下のラウンジだって。その後は、駅付近の居酒屋に移動するから」
ミチルがほろ酔い気分で頬をピンクに染め、帰り支度をする私に耳打ちした。
最初のコメントを投稿しよう!