悪夢の始まり

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「梨花さん疑わないの?病院全体だから、私と会うわけだし…」 「どうだろうな。あいつは疑ってたとしても口には出さないよ。それに、もうすぐ俺が大学に戻るから安心してるんだろ」 「…安心してるなんて、そんなわけ無いよ…」 複雑な思いで、その後の言葉が見つからない。 「…梨花の話は止めよ。お前がいくら考えても自分の矛盾に苦しむだけだ。そんな苦しみが先に来るなら、俺達の関係に意味が無くなる。今は離れられないと自分で分かってるなら、余計な事は考えるな」 和馬はそう言うと、柔らかな笑みと共に深いキスをした。 「ちょっと、…またするの?何てタフな男だ」 再び身体を探り始める彼の手を止め、くすぐったい笑みを漏らす。 「当たり前だ。外科医の体力なめんなよ。それに、次はいつ会えるか分かんないんだぞ?来年なったらこっちの病院の仕事を片付けながら、大学にも準備で足を運ばなきゃいけない。忙しくなるから、今夜やり貯めしておかなきゃ欲求不満で仕事も手に付かん!」 和馬は悪戯っぽく、ニヤニヤと笑いながら、露になった胸元に舌を這わせる。 「別に私としなくても、奥さんがいるんだから欲求不満にはならないでしょーに」 私は意地悪を込めた笑みで彼を見下ろす。 「お前なぁー、萎える発言すんなよ。嫁を抱くのと全く別だろ。面白くもない。って言っても梨花とはずっとしてないけど」 「えっ?…してないの?何で?」 「何でって…お互い当直もあれば生活がバラバラだしな」 「へぇ…そうなんだ」 言葉と共に、ほっと小さな息が溢れた。 和馬が梨花さんを抱く事を考えては、嫉妬に心が乱される。 それだけはお互い様なのだから仕方ない、そう言い聞かせては何度も頭から醜い自分を振り払っていた。
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