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「…なあ、さっきから聞こえるの綾子の携帯のバイブの音だろ。俺は病院から連絡あるといけないから音消してないし」
突然和馬は体を起こし、私のバッグの置かれたソファーに視線を向けた。
「ほかっといていいよ、後で見るから。和馬と違って私に緊急連絡なんて余程の事じゃなきゃ来ないしね」
「それにしても、何回も鳴ってるぞ?とにかく、返事は後にしても誰からかだけ見とけよ」
和馬はそう言葉を掛けると、パネルライトの横に置いた煙草を取る。
「分かった。そうする」
私は枕元のバスローブをはおり、ベッドから立ち上がる。
バッグから携帯を取り出し視線を落とすと、履歴には8件のメール着信と、5件の電話着信が示されていた。
はっ!?…何この件数……
私は驚き急いで着信履歴を確かめる。
電話を掛けて来たのは、5件のうち、1件目翔太…2件目も翔太…3件目が唯…4件目はミチル…5件目は再び翔太…。
私は携帯を持ったまま、その場で呆然と立ち竦む。
なにこれ…翔太だけならまだしも、夜勤をしてるはずの唯!?
そして、さっき別れたばかりのミチル…
それにしても、あの翔太がなんでこんなに頻繁に電話を?
得体の知れない、悪い予感が頭を過る。
一瞬のうちに身体中の血の気が引くのを感じた。
そして、今度はメールを確認しようとしたその瞬間、手の中で沈黙を見せていた携帯が、再び着信を知らせ細かく震え出した。
恐怖心でビクッと体が一瞬にして固まる。
ドクドクと速まる脈動を感じながら、ディスプレイを見つめた。
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