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ミチル？…
表された名前を確認し、少し躊躇しながらも携帯のボタンを押した。
「もしもし…」
「綾子！今どこにいるの？」
電話に出たと同時に、ミチルの大きな声が耳に飛び込んできた。
「どこって…出掛け先だけど…さっきも電話くれたんだね、気づかなくてごめんね、何だった？」
私は平静を装いながら話を切り返す。
「さっき翔ちゃんから電話があったよ。綾子を探してた。綾子、翔ちゃんと一緒じゃないの？」
「えっ？！翔太がミチルに？！だって、何で翔太がミチルの…」
『携帯番号知ってるの？』あまりの驚きに、最後の言葉が喉に詰まった。
「翔ちゃん、綾子と連絡が付かないから唯に連絡したみたい。唯から私に連絡があって…翔ちゃんが私にどうしても聞きたい事があるって言うから、唯経由で番号教えたの。唯、休憩中だったからそれ以上関われないし」
「それで？翔太はミチルに何を聞いてきたの？」
ミチルの話が途切れるのを待てずに放った私の声は、動揺を隠せず見事に裏返った。
｢綾子はどこに行くって言ってた？とか…誰と会うって言ってた？とか・・・私、状況がよく分からなくて、『翔ちゃんと約束してるんじゃないの？』って言っちゃったんだけど…まずかったかな？｣
「…」
言い訳も見つからない。
言葉を失った私の頭の中で、ミチルの声がぐるぐると回り出す。
軽はずみに作り上げた嘘は、周りを巻き込みながら崩れて行く…まるで安物の鍍金が剥がれ落ちて行く様に。
｢あと、結城先生の事を聞かれた…｣
「えっ！？」
再び飛び込む予想外の言葉に、心臓がドクンッと大きな音を立てた。
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