第2話

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あれから何度も自問自答を繰り返したが堂々巡りをするだけだ それに段々と鼻唄さえも心地よく聞こえてきた もはや諦めの境地に入ったのだろうか さらに幾ばくかの時間が過ぎ、無利益な鼻唄が響くだけの空間に変化が訪れた 制服を着た男の子が店へと入ってきた 鼻唄が止んだことから、店の主人は鼻唄を他人に聞かれることは恥ずかしいのだろう 残念ながら私は耳に焼き付く程に聞かされたが もし人間に戻れたなら、目の前で同じ鼻唄を歌ってみよう そんな馬鹿なことを考えているうちに、制服男子は私の目の前にきた おもむろに手は伸ばされ彼の手は偶然か必然か私を掴み、持ち上げた ここでふとある考えが浮かんだ もしかして周りの消しゴムにも全て意識が有るのではないかという考えだ 意思疏通はできないが、私だって消しゴムなのに意識がある いや、消しゴムに意識が入り込んだ それなら横にある消しゴムも私の下にあった消しゴムも、姿形はまったく一緒だが全く別の意識がある可能性もある それは人なのか、他の動物或いは生物なのかもしれない 考えたくは無いが、全ての消しゴムに私と全てが一緒の人格があり、今も私と全く同じ思考をしている可能性だってある だけどこの考えは証明できない 今考えることは無駄だろう それに私は今私を握っている制服男子に選ばれたのだ 他の少しの筆記用具と一緒にレジへ運ばれている これはかなり幸運なことなのだろう これから何時間何日とあの鼻唄をただ聞き続けるのは、苦痛以外の何物でもない その苦痛から解放されるわけだし、この店から出れば、何か私がこうなった原因がわかるかもしれない 少なくとも先程までのただ陳列された状況からは変化があるだろう
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