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満開の桜並木の中を歩く生徒達。
彼らの足取りは軽い。その表情はこれから起こる新しい何かを予感させる希望、期待に満ち溢れていた。
桜と同様、満開に咲いた彼らの笑顔は、今俺が立っているこの屋上からもよく見て取れる。
俺はフェンスを掴んでいた手を太陽にかざし、雲一つない澄みきった空を仰いだ。
快晴だ。いい入学式日和じゃないか。
天も我が校の新入生を歓迎してくれているようだ。めでたい。
「久瀬、そろそろ入学式はじまるぞー」
キイと屋上の扉が開く音と共にかけられた声に振り向く。
「ハルイチ」
色素の薄い金髪を風になびかせて、ハルイチが俺のもとへ寄ってくる。
「新入生見てたのか?」
ハルイチがフェンスの向こうに見える桜並木へ視線をやる。
まだ数名の新入生達が学校を目指して歩いていた。
「そう。今年はどんな子が来るのかなって」
真新しい制服を身にまとった新入生達はここからじゃみんな同じに見える。でも違うのだ。一人一人に、彼ら自身の若き情熱が宿っているのだ。ムネアツ。
ああ早く新入生達に会いたいなあ。その熱い思いを正面から受け止めたい。
「楽しみだな」
俺の隣に並んで、無垢な少年のように笑うハルイチが言う。
彼も新しい何かの訪れを待ち望んでいるようだ。
「さあ、そろそろ行きますか。生徒会長様」
「その呼び方やめろよ」
先を歩くハルイチの背中を追いかけて、俺こと生徒会長は屋上を後にした。
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