聖夜の始まり

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電車の中でカタコトと揺られながら俺は、空きの多い座席に座らずにドアの端に立って流れゆく景色を見ていた。 子供が生まれ、お互い仕事でも責任もある立場になった・・・。 生活はそれなりだが、二人の気持ちは少しずつ冷めているのか・・・。 『いってらっしゃい』、『ただいま』・・・『飯』、『お風呂湧いてるわよ。』・・・etc・・・。 あいつとゆっくり話をしたのはいつだったっけ? そして・・・俺はまだあいつの事・・・好きなのか? そう思った瞬間、俺はドアのガラスに頭を叩きつけた。 妙な視線を感じて、ちらりと振り返ると周りの目が俺に集中していた。 いかんな・・・俺は寝ぼけたふりをして頭を押さえながら目を擦った。 その仕草に、周りの目も安心したのか、ありがちな平日午後の電車の中の風景に戻って行った。
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