それぞれの夜、そして朝。

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瀬名と涼が共に公園を跡にしていたのとほぼ同時刻、夜十時。 水上はとあるマンションのオートロックを解除していた。 一人で暮らしている自宅マンションへ、先程会社から帰って来たばかりだ。 重たい扉を開ければ、しんと静まり返った明かりひとつ無い暗闇が水上を出迎える。 真っ先に口から溢れたのは、深い溜め息が一つ。 連日の残業で身も心も疲労を感じている。 だが今日は、水上にとってそんな事を忘れさせるくらいの大きな収穫があった。 仕事に対して多少のやりがいは感じてはいるものの、どこか単調な毎日。 ノルマをこなす。ただそれだけを目標に、代わり映えのない仕事内容の日々。 そんな中、あまりにも突然訪れた出来事。 名刺を半ば強引に渡し、彼女の連絡先も聞かずに一方的に去ってしまった。 自分らしくない行動に出てしまったと、水上は深く反省する。 (叶うならば…もう一度会いたい…) 彼女の自宅は知っている。 今日訪問した家でおそらく間違いはないだろう。 だが再度訪ねてみたところで、彼女はどう思うだろうか。 印象が良いとは決して言えないだろう。 不審がられるかもしれないし、下手をしたらストーカーの烙印を押されてしまうかもしれない。 現段階でのこれ以上の接触は、こちらからは控えた方が良さそうだ。 (普段仕事では積極的にアプローチするのに、今はいやに慎重じゃないか…) 水上はふとそんな自分に気付き、思わず苦笑した。
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