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つい昨日までそんな態度だった沙那が、今からプライベートで男性に会おうとしている。
自分の才能を認めてくれた人物に。
相手に説得されたのか、或いは、『男は嫌い』だからと意地を張っていては、折角のチャンスを自ら手放してしまう事になるからか。
はたまた、彼女の心を揺さぶる出来事があったのか…。
身内だけれど別の人間である瀬名に、彼女が話さない以上はその訳を図り知る事は出来ない。
だが、彼女の心に変化が訪れているのは事実だ。
(会いたいと思う気持ちに素直に―――か…)
先程の沙那の言葉を、瀬名は思い出す。
振り返れば、小さな挑戦の前には決まって深く考えていた。
人はそれを慎重だと言うのだろう。
勿論それは、事前に危険を回避したり無駄な手間を省く為に必要な事でもある。
しかし必要以上に考えすぎた結果、戸惑いに支配され、諦める形で終わらせていなかっただろうか。
自分の欲を抑え込んではいなかっただろうか。
(素直に、素直に…)
本当は一番に何をしたいのか、自分自身に正直になれば自然と答えに辿り着く。
つまらない意地や見栄など張らずに。
自分の気持ちを偽る仮面など被らずに。
連絡など、今取る必要は無いのかもしれない。
彼は仕事でも関係のある間柄だと判明したのだから、今後も付き合いは大いに考えられるだろう。
それなのに、個人的に会いたいと願うのは欲張りだろうか。
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