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(最後に携帯さわってたの、この部屋だったよね…?)
だが何度探しても、ない。
無意識に服のポケットに入れていたのだろうか、或いはバッグに戻したのだろうかと手を入れたり覗き込んだりしてみる。
が、やはり存在しない。
(……何で、何でないんだろう…)
焦りが募る。
瀬名と沙那が住むアパートには自宅の固定電話は引かれていない。
ほぼ全ての人との連絡手段は携帯電話に頼っている。
その手段を失ってしまうという事は、会社、家族、知人へは勿論、水上への連絡が不可能という訳だ。
沙那がいれば借りる事も出来るだろうが、あいにく先程出掛けたばかり。
(…はぁ、どうしよう……)
思い当たる場所を何度探しても見つけられない瀬名は、とうとう途方に暮れ始めた。
昨日は名刺を粉々にし、今日は携帯電話を紛失する始末。
どうしていつもこうなんだろう、と情けなくなる。
やっと前向きな気持ちになれたというのに。
自分の素直な気持ちに気付いたというのに。
(―――あ…!!)
と、頭にふとある物が思い浮かぶ。
(そうだ!公衆電話!!)
まるでマンガの様に電球マークが浮かんだ瀬名は、ナイスアイデアと言わんばかりに自画自賛する。
(へこんでる場合じゃない、公衆電話探しに行かなきゃ…!!)
財布に入っていた小銭の内の、公衆電話で使用出来る十円玉2枚を握り締めて、慌てて家を飛び出した。
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