桜とスーツと携帯電話。

26/40
前へ
/40ページ
次へ
水上が首を傾げるのも無理はない。 保志沢は外見においてはホストっぷりは凄まじく、現に今日はブラックスーツに赤いシャツを着用していた。 少し悪そうな、それでいて甘い顔立ちに細身の金髪とくれば、知らぬ人から見れば夜のお仕事同然のようだ。 但し性格はさておき、だが。 片や水上は、着崩すことなくきちんとボタンを閉じたスーツ姿。 清潔感のある真っ白なシャツに深い青のネクタイは、とても夜の世界とは縁が無さそうな雰囲気だ。 「…あ、やっぱり似てないかも。すみません」 自分から言ってみたものの、水上と保志沢では似てるどころか真逆だと瀬名は思い直す。 「謝らなくていいよ。でも勘がいいね。 俺、実は元ホストだったりして」 「えぇ!?今の仕事の前ですか…!?営業とホストじゃ全然畑違い…」 「あ、ゴメン、嘘」 水上はまるで子供の様に笑いながら釈明する。 「…信じちゃいました」 ようやく水上の口から彼自身に関する事を聞けたと思った瀬名は、少々肩を落とした。 営業マンもホストもどちらも話術を必要とされる職業だから、畑違いでもなくはないが。 「いやぁ、本気にすると思わなくて。はは、ゴメン。 でも前の仕事、畑違いってのは本当かな」 「…何されてたんですか…?」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

605人が本棚に入れています
本棚に追加