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水上が首を傾げるのも無理はない。
保志沢は外見においてはホストっぷりは凄まじく、現に今日はブラックスーツに赤いシャツを着用していた。
少し悪そうな、それでいて甘い顔立ちに細身の金髪とくれば、知らぬ人から見れば夜のお仕事同然のようだ。
但し性格はさておき、だが。
片や水上は、着崩すことなくきちんとボタンを閉じたスーツ姿。
清潔感のある真っ白なシャツに深い青のネクタイは、とても夜の世界とは縁が無さそうな雰囲気だ。
「…あ、やっぱり似てないかも。すみません」
自分から言ってみたものの、水上と保志沢では似てるどころか真逆だと瀬名は思い直す。
「謝らなくていいよ。でも勘がいいね。
俺、実は元ホストだったりして」
「えぇ!?今の仕事の前ですか…!?営業とホストじゃ全然畑違い…」
「あ、ゴメン、嘘」
水上はまるで子供の様に笑いながら釈明する。
「…信じちゃいました」
ようやく水上の口から彼自身に関する事を聞けたと思った瀬名は、少々肩を落とした。
営業マンもホストもどちらも話術を必要とされる職業だから、畑違いでもなくはないが。
「いやぁ、本気にすると思わなくて。はは、ゴメン。
でも前の仕事、畑違いってのは本当かな」
「…何されてたんですか…?」
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