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恥ずかしさのあまり、公園で受け取ったきりで開けていなかったミルクティーの缶をぎゅっと握り締める。
「7時…もうこんな時間か」
車内のカーナビ画面に表示された時刻を眺める水上。
「今度、良かったらご飯食べに行こう。
今日は行けなくて申し訳ないんだけど…次はリベンジって事で」
助手席で俯く瀬名に向けられる、水上の微笑み。
しかしすぐに水上の視線は前に戻され、切り替わった青信号に従い車を進めた。
「…はい。楽しみにしてます」
恥ずかしさはまだ抜けないが、彼のフォローが嬉しくて瀬名も笑顔で返した。
他の誰でもない、自分だけへ向けられた笑顔は、今ここは絶対的に二人きりの空間なんだと自覚させる。
だけど公園にいた時よりも不思議と緊張しないのは、座席同士の微妙な距離のおかげか、
ムードぶち壊しと言わんばかりに盛大に鳴ってしまった腹の虫のせいだろうか。
「そうだ。どこに食べに行きたい?
今日のお詫びに、どこでも好きな所リクエストしていいよ。勿論、俺のおごりで」
「…えっ、本当ですか?」
ぱあっと、瀬名の声がワントーン弾む。
最近は特別多いが、普段は節約の為にあまり外食をしない彼女にとっては、この上ないお誘いだ。
「…どこにしましょう、うーん…。
…あっ、そうだ!」
一つ、とある店が瀬名の脳裏に浮かんだ。
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