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「駅前にあるカフェなんですけど、ずっと前から私のお気に入りの店なんです。
土日だけ夜メニューがあるらしいんですけど、いつも行く時はティータイムだから食べた事なくて。
だから…いいですか?そこでも…」
フレンチや寿司といった高級料理店の名を挙げたいところだが、服装だのマナーだのよく分からないし、何より図々しい気がする。
昨日沙那と行ったばかりだが、馴染みの店なら安心だ。
「いいよ。何て名前の店?」
「ソレイユ、です」
ピクリ、と水上のこめかみが動きを見せた。
眉間にも若干のしわが寄っている。
「ご存知ですか…?」
「…知ってるも何も…。
いや、うん、分かった。その店にしよう。決行日は後日相談って事で」
何かを言いかけた水上だったが、ハッと我に返るといつもの顔付きに戻した。
瀬名は不思議に思いながらも特別不信がる様子はなく、ディナーメニューが食べられると期待に胸を膨らませる。
「―――着いたよ」
数分後、気が付けば車はアパートの前で停車していた。
徒歩でも所要時間は約15分なのだから、車なら尚更あっという間だ。
「ありがとうございました」
瀬名は頭を下げ、シートベルトを外そうと手をかける。
「…待って」
水上の声が遮ったかと思うと、ふいに彼の左手が伸び、瀬名の頬を優しく包み込んだ。
これまでになく大きく波打つ、瀬名の鼓動。
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