明かされた秘密。【後編】

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「まぁ色々あるよ。 賃金だとか仕事内容だとか人間関係だとか、転職理由は人それぞれだからね」 からりとした声で、だがどことなく憂い気な表情で、水上の運転は休まずに続けられる。 (…あ、しまった…) 人の転職理由を訊くなんて、面接官や図々しいオバサンではあるまいし。 まして懐に踏み込まれる事を一番嫌がっているのは、自分自身の筈なのに。 「…そうですよね」 「いや、それよりもさ。 …そうだ。フレンチ行った事ないなら作ってあげようか。 だいぶ久しいけど、体は覚えてるだろうし。味はちゃんとしてると思うよ」 「本当ですかっ!!わー、嬉しいです!! どうしよう、嬉しすぎる!何作ってもらおう…」 水上からの提案に、瀬名の心は踊るようにときめいていた。 が、喜びも束の間ふとした疑問が浮かび上がる。 「あれ、でもどこで…?」 「んー、君の家…か俺の家?」 口の端を軽く吊り上げ、瀬名の顔を一瞬だけ見やる水上。 「どう?」 (…どうと訊かれても…っ) いくら料理をごちそうになるからといって、どちらかの自宅にどちらかが訪ねるという事は、 二人きりの室内であれば、当然『そういう事』も想定される訳で。 歓迎すれば、案外肉食系だね、と思われかねない。 だが嬉しいと大喜びした手前、断るのも不自然な気がしてしまう。 「………えと、あの…」 頬を染め、問われても何ら答えの出ない瀬名の様子に、水上はクッと喉を鳴らした。
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