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『妹の知り合い』だと必死に弁明していた彼女。
おそらく嘘ではないのだろう、と水上は思う。
確信ではなく、あくまでも直感だが。
(その場しのぎの嘘をつけるタイプではないだろうし…)
しかし水上は、彼女の説明を聞いても心の底からの納得は出来ずにいて。
そこに特別な感情は無かったのだとしても、二人きりで出掛けたという事実に歯痒さを覚えていた。
冷静を装い車へ乗ってもらったが、どうにも胸の内のもやを消せず。
そんな思いを募らされた事が何だか悔しくて、思わずからかわずにはいられなかった。
そして、発してしまった告白の言葉。
―――焦っていたのかもしれない。
返事を濁す彼女に『答えは急がない』と大人の余裕を演じてしまったが、そんなゆったりとした心構えなど自分は持ち合わせていただろうか。
今まで誰とも付き合った事がないと言っていた。
欲するままぶつけてしまえば、その無垢な細い体を壊してしまいそうだ。
だから己の欲を理性で抑え、代わりに彼女をからかう事で印象を残そうと躍起になる。
(…まるで子供だな…)
水上は自分自身に辟易し、仰向けのままそっと目を閉じる。
柔らかな前髪から覗く、長い睫毛が暫し伏せられた。
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