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『花の金曜日』とはよく言ったものである。
今や死語に近いかもしれぬ言葉だが、週休二日制の会社に勤める人が金曜夜に味わう達成感や解放感は時代を経た今も変わらぬものだろう。
瀬名もこの日の夜、心からそれを感じていた。
残業をしなければならない程の仕事量もなく、本日分は就業時間内には終わらせる事が出来そうだ。
しかも、明日土曜は休日。
これまでも、休日に同人誌即売会を控えていたり映画を見に行く予定があった時には、楽しみでどことなく落ち着かなかったけれど。
だけど今までとは違う何かが起こりそうな、少しだけ高揚した気分。
(あとはFTPでアップして、ブラウザで確認…と)
依頼されていたwebサイトの更新を的確に済ませて、ふとパソコンのツールバーに表示された時計に目を遣れば、時刻は六時半間近。
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
定時に退社したあやの以外の、残された男性陣に挨拶を済ませた瀬名は颯爽と事務所を飛び出した。
「…何か楽しみな用事でもあるのかな」
デスクに腰掛けながら、去り行く彼女の背中を眺めて保志沢が呟いた。
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