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自転車にまたがり家路を急ぐ瀬名に、突然降り始めた強い雨が容赦なく叩き付ける。
(降るって言ってなかったのにっ)
仕事を終えての帰路、怪しい雲行きだとは感じていたけれど。
ただでさえ薄暗い夜道だというのに、前髪から滴る水分のお陰で視界は随分と狭い。
ここまで本格的に濡れてしまっては今更急いだところで無意味とも思えるが、
アパートに到着すると、瀬名は足早に愛車を止めて玄関扉を開けた。
「うわ、お姉ちゃんビショビショじゃん!」
「ただいまぁ、タオル持ってきてー」
「ちょっと待ってて」
幸いにも先に帰宅していた沙那からタオルを受け取ると、玄関で一通り拭いバスルームへ向かう。
温かいシャワーを浴び終え、いつものパジャマ代わりのジャージに着替えたところで、キッチンから漂う甘くもスパイシーな香りが瀬名の鼻をくすぐった。
「私先に食べたから。残りは全部お姉ちゃんのだからね」
「わ、やった。ありがとう!」
キッチンのコンロに置かれた鍋の中を覗けば、香りの正体であるカレーの登場。
今週の夕食担当である沙那のお手製料理を前に、瀬名のお腹の虫がぐうと音を立てた。
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