ふたりきりの夜。

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凛とした涼の声。 その場の空気は張りつめたように静まり返る。 マンションの一室とはいえ防音仕様に施された事務所は、近隣の物音も上階の足音すらも彼らの耳には届かずに。 ただひたすらに、無音の空間が二人を包み込む。 「………」 「…………」 全く予想だにしていなかった彼からの告白。 どう声を上げるべきか、思考機能が停止してしまった瀬名の頭は適切な言葉を浮かべないでいた。 ―――避けられていたのは合っていたけれど。 その原因は勘違いで…。 涼さんが、私の、事を―――。 思いもよらぬ事態に意味を成した言葉を紡げないでいる瀬名の頭上で、涼は小さな息を吐く。 瀬名の背に回された腕が少し緩んだかと思うと、 「ごめん…、今日はこんなこと言うつもりじゃなかったんだ…。 そんな困った顔しないで…」 そう言って、少し腰を屈めて彼女の顔を覗き込む。 ほどかれた涼の腕の先が、俯く彼女の頬にそっと触れた。 「入社してまだ間も無いのにおかしいかもしれないけど…。 一目惚れ、だったんだと思う。初めて会った日から気になってた」 “一目惚れ” その言葉は、瀬名の胸に乱れた音を立てる。
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