やがていつかは告げること。

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大学近くの地下鉄の駅前には、アパレル店や飲食店など多数の店舗が軒を連ねるショッピングモールが存在する。 また名所となっている展望タワーや、併設されている動植物園などもあり。 試験終了後にはいくつか寄ろうと、行きの車中で計画を立てていたのだが。 (…水上さんの言う通りかもしれない…) 今の心理状態では、彼に話さなければならないという近い未来への不安ばかりが募って、現況を楽しめる余裕など持ち合わせていない。 本来なら楽しいはずの出来事がそうでなくなってしまうのは明確である。 自分自身が把握するよりも、彼の方が自分の事をよく知っているようだ、と瀬名は思った。 「でも…」 「またいつでも来れるよ」 本当だろうか。 今日が彼と二人でいられる、最後の日になりやしないだろうか。 瀬名の胸中に不穏が渦巻く。 (折角の機会なのに…) 何より、彼にそんな提案をさせてしまう自分の至らなさが情けなくて仕方ない。 ふと、水上の歩みが止められる。 瀬名が顔を上げると、コインパーキングに駐車された彼の車の前まで辿り着いていた事に気が付いた。 清算を終え、車のドアロックが解除されると 「どうぞ」 水上に促されて、瀬名は行きと同じように助手席に乗り込んだ。
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