やがていつかは告げること。

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地上約五十メートルの丘の上の展望タワーは、建物の入り口に辿り着くまで、アスファルトの坂道が緩やかにかかる。 動物園と植物園に隣接する『東山スカイタワー』と名が付くここは、二十年以上前に建てられたカップルからファミリーまで楽しめる愛知の有名スポットだ。 瀬名は息を切らせながら、己の体力の無さを呪いつつ、ようやく終わった登り坂に深い安堵の息を漏らした。 登りきった先には、一面の白いタイル地のテラス。 そして中央には、ガラス張りの細長いビルのような展望タワーがそびえ立っていた。 「へぇ、思ったより結構高いね」 「…っ、はぁっ、そうですね…」 「大丈夫?あっちで少し休もうか」 そう言って、テラスのフェンス沿いに設置されたベンチを指差した。 これしきの事で水上に気遣われてしまった自分にショックを受けると同時に、ちっとも疲れた素振りを見せない彼に、瀬名は尊敬の念を抱く。 (私、完全に運動不足だよね…) 日頃の怠慢を反省しつつ、彼の示したベンチへと近付いた。 「……わあ…」 ベンチに座ろうとした瀬名の目が、途端に輝いた。 周辺に視界を妨げる建物の無いテラスからの眺望は、初夏の緑に覆われた山と、どこまでも続く広大な空。 昼の青空の名残を残して、中央は紫、山の付近はオレンジと淡いグラデーションを彩っている。
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