それを忌むワケは。

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突然、変わっていた。 しきりに携帯を開いてはディスプレイを眺め、時には何分間も続くにらめっこ。 閉じている時ですら、お知らせランプが点いていないか、机上に置かれたそれを何度も覗き込むという変貌ぶり。 おかしい。 帰宅時間も以前に比べて遅い傾向にある。 総合的に考えて、導き出される答えは一つしかない。 もしかして…と、沙那が妙な胸騒ぎを覚え始めたのはこれがきっかけだった。 それが決定打となったのは、つい昨日の夜の出来事。 リビングでくつろぐ沙那の目の前で、テーブルに置き去りにされた瀬名の携帯がメールの着信を告げた。 持ち主は夕食の当番でキッチンに向かっている。 教えるつもりなんて毛頭なかったのに。 やたらと着信を訴えるランプの点滅が目について。 『お姉ちゃん、携帯鳴ってた』 沙那は携帯を片手に、包丁を動かす持ち主のもとへ寄った。 礼を受けた沙那はすぐにリビングに引き返すも、瀬名の様子が気掛かりで、遠巻きからちらりと窺う。 沙那の視界に飛び込んだのは。 携帯のディスプレイを見つめる瀬名の、ふにゃりと綻んだ顔。 自然と崩れてしまう口元を抑えながらも、目尻は下がり、頬はほんのりと紅潮させている。 喜びに満ちた彼女の表情はかつて見た事がないほどに、可愛くて、幸せそうで。 瞼に焼き付いて、離れなかった―――。 沙那が瀬名の携帯を盗み見たのは、その日の深夜の事だった。
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