461人が本棚に入れています
本棚に追加
(…何やってんだろ、私)
視線を地面に落としたまま、街灯に照らされた歩道を背中を丸めて歩き続ける。
精神的な疲労と、ひた走ったせいの肉体的な疲労がどっと押し寄せ、沙那の足取りは実に弱々しい。
(あぁ、もう嫌気がさす…!)
いい歳して、ちっとも素直じゃない。
現実に向き合おうとせず、心とは裏腹の事を言って背いてばかりだ。
今だってこうして、自宅に戻るかもしれない姉と顔を合わせたくなくて、より遠くへ遠くへと逃げている。
どうして素直になれないんだろう。
どうして、相手を傷付けてしまうような行動をとってしまうんだろう。
(お姉ちゃんみたいに、いつも穏やかで、優しくいられたらいいのに)
自分より背が低くて、痩せっぽっちの童顔で。
しっかりしているように見えて、時々抜けてて。
姉のくせにしょっちゅう妹に注意されて、反発する事なくそれを受け入れて。
傍目に苛々するくらい、行動は慎重派で。
(…私が一番、お姉ちゃんを知ってるのに…)
再び沸き上がった黒い感情にハッとして、沙那は思わず首を振った。
ふと顔を上げれば、前方に一際強い光を放つ建物が見える。
コンビニだ。
やけ酒、もとい、惜しくも未成年の為“やけジュース”でもあおろうかと、沙那の足はコンビニへと吸い込まれていった。
最初のコメントを投稿しよう!