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「何だ、織姫さんですか」
「つれない反応だね~。こんな所で奇跡の再会だってのに」
「しょっちゅう会ってるじゃないですか。今更驚かないですよ」
「あははっ、そりゃそうだ。
あ、オフの時は『保志沢』でいいよ。その名前、あんまり呼ばれ慣れてなくて。
会社では『マスター』だしさ、時々自分が呼ばれたんだか訳分かんなくなる時があるんだよね」
ケラケラと笑い声を上げる黒ずくめの金髪男性、もとい保志沢。
訳分かんなくなるのはこっちの方だ、と内心思いながら、沙那は隣に立つ彼を見上げた。
この男、コンビニという狭小空間では非常に目立って仕方無い。
ただでさえ長身というだけで人目を惹くのに、声のボリュームを慎まない上に、モデルばりの整った顔立ち。
些細な会話を交わしただけで、相手を巻き込んで不用意に注目を浴びせてしまう。
(うわっ。レジのおねーさん、こっちガン見してるし!)
「保志沢さん、もうレジ済んでんなら外に出ましょうよ」
「ん、沙那ちゃんはいいの?」
「私はいいんですっ」
強めの口調でそう返した沙那は、栄養ドリンクが何本か入ったレジ袋を提げる保志沢の腕を引っ張った。
女性店員及び、店内にいるほとんどの客の視線を集めながらの退店であったのは言うまでもない。
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