462人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず店を出たものの、結局彼のルックスのお陰で出入口でも目立ってしまい。
沙那は再び保志沢の腕を引き、店舗真横の大型トラックも停められる駐車場までやって来た。
(あれ?何で私、保志沢さん引っ張ってきてんだ?別に用事無いんだけどな。
…うん、まぁいいや。まだ家戻りたくないし、時間稼ぎの相手になってもらお)
心の中で保志沢を勝手なポジションに付けて、改めて目の前に立つ彼を見上げる。
薄暗がりの中、店舗から漏れる光が彼の体半分を射し、顔の彫りの深さを一層際立たせる。
自分達を傍から見たら、ホストとその同伴の客みたいな構図なんじゃないか、と沙那は思った。
「今日は一緒じゃないんですね」
「んー、誰の事?」
本気で分からないのか、それともおどけているのか、横髪をかき上げてすました表情で尋ねる保志沢。
言うんじゃなかったと後悔しながら、沙那は口をすぼめて答えを返す。
「…だから、いつも一緒の……堅物メガネ…」
「あはははっ!星也の事?そんなに頻繁にいるように見える?
って、否定はしないけどさ。
そういう沙那ちゃんこそ、毎日“お姉ちゃん”と一緒にいるじゃない」
「……っ!!」
普段ならかわせる保志沢のノリが、この瞬間、やけに沙那の気に触れた。
「そりゃ一緒に住んでますけど、別に毎日外でも一緒ってワケじゃないですよ!!
それに、たまには一人になりたい時だってあるんですっ!!」
(……あ…しまった…)
矢継ぎ早に強く言い過ぎた。
思わず口を抑えたが、時既に遅し。
気まずそうに俯く沙那を、保志沢は黙して見下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!