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「ちょっと星也、落ち着いてよ」
「落ち着いてる。だからこそ言ってんだ」
「他に方法がないんだから仕方ないだろ」
「仕方ない?“持ち帰り”する事がか?
お前の女性に対する考えが足りん事は重々承知してたが、まさかそこまで残念だったとはな」
星也の低い地声はより下を這い、今しがたきかせた睨みは更に鋭利な刃物と化して。
保志沢は彼をなだめるように、両手を挙げたホールドアップの姿勢をとった。
ヘルメット片手に、アップされた黒髪に眼鏡、露出の少ない着衣と、いかにも堅物を絵に描いたような印象の男性。
片やそれをやや見下ろす形で向かい合うのは、肩まで伸びた金髪はホストを彷彿とさせる、スーツ姿の男性。
駐車場の片隅で、タイプの異なる長身の若者が言い合う様は、通行人やコンビニ利用客の目を引くのに充分値している。
通りすがりの他人から注がれた視線に、我に返った星也は、夜空を仰ぎ深く呼吸した。
「だから、部屋を貸すだけだって。何も俺まで同じベッドに入るなんて言ってないよ、星也」
「……」
「大体俺は予定があって、家を空けなきゃいけない。どうせ一晩無人になるなら、そこらを徘徊するよりウチで寝てもらった方が彼女の身は安全だろ?
寝床を提供する、本当にただそれだけの意図しかないよ」
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