暗がりの中で。

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「…だ、だから、今度、買いに行くの付き合って…」 ヘルメットをか、と星也が再度問い返す。 頬を染めながら頷いた沙那の言葉は、実にたどたどしい。 「…っ、また、後ろに乗らせてもらうかもしれないし、その度に借りるのどうかと思うし…。 だから、必要でしょ。私専用のヘルメットが」 「ああ、そうだ。確かにいる。買いに行かなきゃな」 そして、何度だって後ろに乗せてやる。 座席の二人乗りスペースは、お前専用って決めたから。 星也の顔に、極めて稀な満面の笑みが浮かんだ。 つまりは、次に個人的に会う約束を取り付けたようなもの。 加えて、次回一度きりでは終わらないという意味合いに、歓喜が込み上げ顔を綻ばせずにはいられない。 「…付き合うっていっても、交際の意味じゃなくて、付き添いだからね」 「はは、言われんでも分かる」 破顔したまま、星也は切り返した。 最初は“付き添い”だっていい。 長い間トラウマに苦しめられていたのだ。 すぐに交際コースを口にする可能性は低いと承知の上。 長期戦は覚悟している。 ゆっくりと、彼女なりのペースで心を開いてくれれば、それでいい。 「じゃあ、これはアイツに返しておくから」 星也の手が、差し出された真っ赤なヘルメットを受け取った。
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