428人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「何を狙って…」
ようやく発した星也の声に、沙那は「土地」と端的に答える。
イコール財産、という事だろうか。
「…土地…?」
「そう。生前のお父さんから譲り受けてた土地」
沙那の注釈を皮切りに、簡潔な説明が始まった。
もともとその土地は、彼女の父親が代々引き継いだもので、戸建て住宅建築に向けて名義が両親の名になったという。
だが直後に父親は逝去。
母親は土地は売却せずに守りを貫いた。
一方でその土地の近辺は、開発等により市場価値が膨らみ、急激に地価が高騰した。
そこへ突如現れた“新しいお父さん候補”として名乗りを上げた人物。
彼は母親に好意があるふりをして近付き、固定資産税を免除する方法があるなどと巧みな話術で誘導。
土地を売却し、得た金銭を詐取しようと目論んでいたというのだ。
「結果としては、寸前で気付いて売りには出されなかった。
でも、家族皆が傷付いて…特にお母さんはボロボロになった。
私も…悔しくて…どうして、あんなに優しかったのに、って。
裏切る為に近付かれたのに、優しさに惹かれて好きになった自分が、凄くショックで…」
最初のコメントを投稿しよう!