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「どうして、俺に話してくれたんだ」
「………。
ずっと、誰にも言えなくて、抱えてる事に限界がきちゃったのかもしんない。
お姉ちゃんは私のトラウマを知ってるし、本当は勘付いてたかもしれないけど、私から『あの人を好きだった』なんて告白は出来なかったし。
…ずっと、誰かに、聞いてほしかったんだと思う」
再び憂いげな表情が、星也の目に映った。
ゆっくりと木製ベンチから腰を上げ、腰回りを軽くはらっている。
「そろそろ行こうか」
途端に、退却を促そうと支度する沙那の細い腕が掴まれた。
「―――!」
先程よりもうんと驚愕して見下ろす沙那と、ベンチに座ったまま彼女の手を取る星也が向かい合う。
「俺に、関わらせてくれないか」
「どういう意味…」
「過去を忘れる事は出来ないかもしれないが、異性に対する概念を塗り替える事なら可能なはずだ。
お前の過去を聞いたら、もうほうっておけない」
強い意思を宿した瞳。
眼鏡の奥から沙那を見上げる眼光は、熱く、真っ直ぐに彼女を捕える。
「関わってほしいつもりで話した訳じゃ…」
「俺が関わりたい。俺の望みだ」
「………」
「さっきの謝罪みたいに押し付けがましいかもしれないが、気付いた事を一つ、言わせてくれ」
星也が立ち上がり、背の高い彼が見下ろす形となった。
二人の視線がかち合う。
「お前が好きだ」
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