暗がりの中で。

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勝気ぶりを如実に表したような大きな瞳は伏せられ、代わりに長い睫毛がはっきりと描かれている。 寝相のせいか、少し乱れた長いポニーテール。 そして僅かに開かれた、ふっくらとした紅色の唇。 普段から見慣れているようで観察など一度たりとなかった、沙那のひとつひとつのパーツを、星也は視界に収めていく。 華奢な肩は、呼吸に合わせて小さく上下し。 ジャンパーの下のスカートからは、細く白い脚が覗いている。 緩く拳を作った手は、自分と比べてやはり女性らしく小さい。 と、再び視線を彼女の顔面に戻す。 (…コイツも喋ると残念なタイプだよな。いつも黙ってりゃマシなのに) 本人が耳にしたら、あっという間にバトルが勃発してしまいそうな台詞だが。 裏を返せば、彼女の外見に対して悪い印象はないという意味だ。 「………」 沈黙と共に時間が流れる。 静寂の中、沙那の規則正しい呼吸だけが唯一の音を奏でる。 無意識であった。 星也が、腕を伸ばしたのは。 それが彼女のどこに向けてだったのかは、定かでない。 辿り着く前に沙那が声を発し、我に返った星也が即座に腕を引っ込めたからだ。 「……ごめんね……お姉ちゃん…」 儚く呟かれた、沙那の寝言。 (夢ん中じゃやけに素直だな。 現実でも、同じ態度でいてくれりゃありがたいんだが) って、俺も人の事言えねえか。 星也は自分の髪を掻き上げながら、自嘲気味な笑みを口の端に乗せた。
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