消えた影と潜む影。

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異性に対する概念を塗り替えたいと彼は言った。 名前を口にするだけでも虫酸が走る“あの人”の裏切りによって、植え付けられた男性への嫌悪を。 そして、好きだとはっきり告げた。 (私は、アイツをどう見てるんだろう…) 男性として?ならばグループとして?個人として? 個人であるなら、この先も受け入れ続ける事が出来るんだろうか。 “俺に、少しだけ気持ちを預けられないか” ふと想起されたのは告白の時の彼の言葉。 いつもの強腰な姿勢は影を潜めた、遠慮がちな問い掛けだ。 こんなにも、悩まされているのに。 「少しだけで済んでないじゃん。ばーか」 ―――と、携帯の着信音が矢庭に鳴り響いた。 「エスパー…?」 思わず呟いてしまったのは、今まさに吐いた恨み言のターゲットの名がディスプレイに表示されたからだ。 妙に恐々と、そして鼓動を高まらせながら、携帯を耳に押し当てる。 しかし応対第一声は「何か用?」と、相変わらず素っ気ない。 『やけに素直なメールが来たなと思って。 どういう風の吹き回しか訳でも訊いてみようかと』 三日ぶりに耳にした星也の声はどうやら含み笑いで、沙那は見えない相手に口先を尖らせる。 「…っ、お礼ぐらいちゃんとするわよ。 ちょっと、遅くなっちゃったけどさ。 私そこまで社会性ない奴じゃないからねっ」 『は、そうだったな、悪い悪い』 「馬鹿にするなら切るっ」
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