消えた影と潜む影。

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「どうしてそんな事言うの」 『…すまない。今のは意地が悪かった。 お前にだって他人に知られたくないプライバシーの範囲はあるよな。 それを勝手に北川に教えたりして』 「そうじゃ、なくて…」 声が震え出した。 何故彼の言い分を否定したのか、自分は何を言おうとしているのか、沙那自身把握出来ないでいる。 そしてもう一つ、深く刺さった星也の言葉が頭から離れない。 “彼氏でもできたら” 彼は告白した側だから、選ぶ権利をこちらに委ねているのだろうが。 それにしたって、まるで俺は該当外だとでもいうような他人行儀な言い方だ。 (いつだって偉そうなクセに、何でこういう時は低姿勢なのよ…) 胸の内にかかる靄の中に、沸々と苛立ちが沸き起こる。 抑える間もなく、沙那は口を開いていた。 「部外者みたいな発言しないでよ。『俺が彼氏になったとしたら』ぐらいの仮定も出来ないの?それこそらしくないじゃない」 『……』 「何か言ってよ!どうして急にそんな弱腰なの!?いつもの態度はどこにいったのよ! アンタこれから、私の彼氏になるんでしょ!?」 (…………あれ…) 最後、言い方間違えたような。 彼氏になるつもり?なる予定?なりたいと思ってるんでしょ? そうだ、そのニュアンスで言い返そうと思っていたのに。
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