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「いっ、今のは言葉の綾っていうか、言い間違いっていうか!違うの、だから…」
星也は一言も発しない。
意図してか、呆れて言葉も出ない状態なのか沙那には分からない。
(思考回路がぐちゃぐちゃだ…私、何を言ってる?)
頭のどこかでは俯瞰している自分がいて、早く訂正すべきだと警告する。
だが、先程の彼の言葉がそれを阻む。
“友達”そして“彼氏ができたら”
どうしてこんなにもショックを受けているのか。
距離を置かれたような気がして傷付いたのは何故なのか、今は原因究明をすべきだともう一人の自分が訴える。
「だから、言いたかったのは…」
そこまで発して気付いた。
胸が痛んだ、確かな理由に。
『悪いが、言われんでも重々その予定でいる。叶うなら、お前の彼氏に』
続く言葉を失っている沙那の耳に、電話越しで少しくぐもった星也の声が落とされた。
「今も、そのつもり…?」
『あぁ』
予定が現在進行形であると聞けた事に、沙那は心から安堵する。
あぁ、やっぱりそうだ。認めよう、潔く。
自分の中の想いを確信して、その決意が強く抱かれる。
と、『ただし』と星也が付け加える。
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