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『“予定”は昇格の辞令が出なきゃ“決定”には至らないんだ』
「何、それ」
『友達から彼氏への昇格を認める正式な辞令』
彼らしい比喩に、沙那の強張っていた頬がほどかれた。
壁に体を預け、背筋を伸ばし座り込む。
そして電話口の彼の顔を思い浮かべながら、リビングの天井を仰いだ。
(今は逆らう時じゃない。
自分の気持ちに素直になれた時は、必ずいいことが待ってるんだ)
「その辞令っていつ交付したらいいの」
『いつでも。年中無休24時間』
コンビニみたい、と沙那が返すと、星也がふっと軽く吹き出した。
「…さっきの言い間違い、訂正しようと思ったけどやっぱりやめる。
気付いたの。
これから先、私の隣にいる人は他には考えられない。アンタしか思い浮かばなかった」
『……』
「だから、辞令出してもいいよ」
一拍置いたのち、彼に悟られないよう沙那が静かに深呼吸する。
「彼氏に……」
『お前今どこにいる』
意を決して口を開いたところで、星也の急いた口調の質問が遮った。
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