332人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「これやる」
しばらくして、戻った星也が瀬名のデスクの端に小冊子を置いた。
見ればカップル向けデートスポットや、ファミリー向けレジャー施設が紹介されている地元向けフリー情報誌だ。
「郵便受けに入ってた」
そういうの見るのは女性のが好きだろ。
言われて瀬名は、フリー情報誌をパラパラと捲る。
「そういえば、星也さんは沙那とどこに出掛けてますか?」
部下の突飛な質問に、ペットボトルのソーダを煽っていた星也がむせた。
見ている側が気の毒になるほどのむせっぷりで、原因を作ってしまったらしい瀬名は責任を感じオロオロし始める。
あやのはといえば、笑いをこらえるのに必死な模様だ。
「唐突すぎるぞ北川っ。
そういう質問は、一つ屋根の下に住んでる奴にいつでも訊けるだろっ」
「だ、だって沙那、ちっとも教えてくれなくて」
保志沢と涼は外回りだ。
彼等に醜態を晒さずに済んだ事にホッとしながら、鼻腔までサイダーを進入させてしまった星也は、最後に一つ咳払いをした。
「大した所には出掛けてないぞ。
先週映画館とボーリングに行ったぐらいだから、ごくごく普通だろ」
「映画館!ボーリング!」
交際二ヶ月。水上と休みが合わない瀬名にとって、デートとしてはどちらも未経験のスポットだ。
いち早く妹に先を越されてしまい、ショックで思わずおうむ返ししてしまう姉である。
最初のコメントを投稿しよう!