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(二人のために別れを薦める?
違う。この人は私達に寄り添った助言なんてしてない。
こんな敵意を剥き出しにしたやり方。
そうだ、この人はきっと―――)
「水上さんの事が好きなら正々堂々と告白して下さい。
別れた方がいいとか、どうしてそんなまわりくどい…」
瞬間、ぷっと薫が吹き出した。
「あはは。私が、主任を好き?
やだ、そんな風に映ってたの」
薫は体を内側に曲げて、心底可笑しいとばかりに拳を口元に当てて破顔する。
(何が愉快なの)
人を小馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。
瀬名の苛々が激しく募る。
仕事上でも容姿と身長の低さ、年齢から甘く見られた経験がなかった訳ではないが、その部分は丁重な姿勢と迅速な処理でカバーしてきたつもりだ。
だが、社会人になってここまで他人に見下されるのは初めてだ。
「それは大きな誤解ね」
瀬名の表情が訝しげとなる。
「私は彼を恋愛感情を挟んで見てなんかないわ。
その事を踏まえて、今からの助言を聞いてほしいの」
「……」
「あなた達が別れた方がいいと提案する理由は二つよ」
まるでプレゼンか講義かのような冷静な口調で、薫が手でVの字を作った。
「まず一つ目。
北川さんの存在は彼のためにはならない。
二つ目。
主任の存在は北川さんのためにはならない。
但し、工夫次第でお互いのアドバイザーぐらいのポジションには就けるかもしれないわね」
「…意味が分かりません」
「今度はソフトに包みすぎたかしら。一つ目から具体的に補足させて頂くわ」
彼女はテーブルに前のめりになるように腕を組み、続けて口を開いた。
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