弱さを生んだ過去。

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「いつだそれ」 「来週。八月の最初の土曜日。 って、だから行きたいって言ってないじゃん」 「素直じゃねぇなオマエ」 「…うるさいな」 突っかかれば、負けじと突っ返される。 負けず嫌いでひねくれ者の彼女は指摘されるのが大嫌いで、揶揄すれば同じ刃かもしくはそれ以上の武器で返そうとムキになる。 そんな彼女の口を慎ませる方法は一つ。 「その素直じゃない面があってこそ、なのかもな」 「どういう意味…」 眉根を寄せた沙那に、伸ばされた星也の手が頬を包んだ。 眼鏡の奥からじっと見据えたまま、徐々に距離を詰めていく。 沙那の瞳が一瞬だけ揺れ、やがてそっと瞼が下ろされた。 「このカオとのギャップが引き立つのは」 桜色の唇に軽く触れて離すと、相手のパーツは、潤んだ瞳に綺麗に染まり上がった頬。 さらに予想通り押し黙る。 無防備な態度を通された男心を少しは知ればいいと、当て付けるように。 沙那のポニーテールの持ち上がった髪と垂れ下がった髪の間に手を差し入れ、今度は深く唇を塞いだ。 “飼い方を覚えた”なんて。 思わず漏らした本音に、大切な人がいる事を部下に言い当てられてしまったが。 九つも上だからとどんなに大人ぶって自制しても、可愛い彼女の言動を目の前に、制御はいとも簡単に崩される。 つまりは実質、飼われているのは俺の方じゃないのか。 星也は自嘲的な見解を頭の片隅に過らせた。
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