弱さを生んだ過去。

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「家でもずっと元気なくて。あからさまにじゃないんだけど、一生懸命取り繕ってる感じが痛々しくて」 「何か悩みでも?」 「さあ…?仕事について悩んでるんだったら上司のアンタに任せるけど」 彼氏と上手くいってないのかなぁ。 今この場には居ない実姉に思いを馳せた神妙な呟きに、星也の目が見張られた。 「な、なに」 「意外な単語が出てきて驚いた。…もう、認めてるんだな」 省略されたワードが『姉の彼氏を』である事に沙那が気付いたのは素早い。 「自分が彼氏出来てるのにお姉ちゃんはダメってどれだけ了見の狭い奴よ。 大体、アンタと…付き合う前からとっくに認めてるし」 姉妹間で恋愛に関する話題は皆無、とはいえ、時折見せていた瀬名の幸せに満ちた顔は順風満帆の証だ。 沙那は思う。自分じゃ絶対にそんな顔はさせてあげられない、と。 かつては嫉妬を覚えたりもしたが、どうあがいたって敵わないのだ。 満開の笑顔の花を咲かせられる、幸せの種の提供者には。 だがここ数日は、その顔を見る機会が格段に減った。 携帯を覗く時であったり、帰宅後のただいまであったり、今までは幾度も笑顔を浮かべていたのに。 加えて懸念されるのが、二週連続で水曜日の帰宅時間が早かったという事だ。 と、俯く沙那の頭を星也が優しく撫でた。 子供扱いしないでよ、といつもなら反発するところが不思議と受け入れられ、そのまま流れるように星也の懐に頭を預ける。
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