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止まった足取りを、涼の問い掛けがさらにとどまらせる。
「あの、瀬名ちゃんここんとこ元気がない気がするんですけど。
水上さん、何か知ってませんか」
「…欠勤でも?」
「いえ、勤怠自体に影響はないです。
ただ最近妙に寂しげというか…個人的に気になって」
水上が振り返り、涼の前に向き直った。
眉をしかめて、
「原因は分かってる」
涼を見据え、今度は明確な口調でそう告げた。
「迷惑を掛けて申し訳ない。
でも、俺と彼女の問題だから。
滝本さんに『個人的に』気に掛けてもらわなくても大丈夫だ」
きっぱりと突き付けられた謝罪と通告は、まるで部外者だから関わるなと排除されたようで。
―――何が、大丈夫だ。面白くない。
水上の言葉が気に障り、涼は表情をムッとさせた。
「……水上さんは、僕が瀬名ちゃんに告白した事、知ってます?」
水上が目を剥いた。
言葉を失ったままその場に立ち尽くす。
凍り付く彼の前で涼は失笑し、腕組みをして空を仰いだ。
「その驚きっぷりだと知らなかったんですね。
けど随分古い話ですよ。もう、三ヶ月も前の」
一般的に三ヶ月の経過で古くなるかどうかは別として、涼にとってはそう思わせるのに充分な期間だった。
あまりにも色んな事がありすぎた。
告白も失恋も、それから味わった屈辱も。
「………」
「別に今更奪おうとかタチの悪い事は考えてないですよ。
告白の数日後にはっきりフラれてますし、気持ちの整理はついてます。でも……」
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