絆か、償いか。

23/32
前へ
/32ページ
次へ
それが懸命な虚勢であると気付かないほど、伊達に妹をやっていない。 お姉ちゃんの事なら誰より知ってる。 そう自負する沙那だが、唯一姉について知り得てないのは恋愛に関する部分だ。 彼とどのように知り合って、どんな想いを抱いてきたのか。 第一印象は?告白はどちらから?順風満帆だった?紆余曲折あった? 人生における極めて重要なコンテンツであるのに、お互い腫れ物に触るように話題にしてこなかった。 きっと自分が原因なのだ。 少し前なら反発していただろうが、今の沙那は素直に認める事が出来る。 男は嫌いだと豪語する自分に気後れした姉は、交際相手の存在を告げられなかった。 黙秘されたまま、なのに日増しに輝き可愛く変貌していく姉に嫉妬を、何も知らない自分自身に歯痒さを覚えた。 そんな仲違いは修復されたものの、恋愛トークは未だ禁忌の域を脱していない。 星也の事をどう思っているか訊かれた時があったが、はぐらかすどころかぶっきらぼうな態度をとってしまったり。 星也とバイクで出掛けていた現場を目撃された時もふててしまい。 そんな頑固さを徹する自分がいては、姉が恋愛トークを気軽に振れる環境下ではなかっただろう。 暗黙の了解のようにタブー視されたそれを打破するには―――自ら振るしかない。 こちらが伏せたままでは、相手だって遠慮するのは当然だ。 そう意を決して、沙那は口を開いた。 「お姉ちゃん、わっ私、彼氏、が…できたんだけど…!」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

323人が本棚に入れています
本棚に追加