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沙那が顔を赤くすると、瀬名の表情がふっと和らいだ。
「前にお姉ちゃんとケンカした時に、それが一番だって学んだの」
気恥ずかしさをごまかすように、ごにょごにょとくぐもった口調で付け加えられる。
「…うん。そうだね。ちゃんと素直に謝る。
どうしようって言ってばかりじゃ、何も前に進めないもんね」
そうだ。湖条がインターンシップのミスで思い悩んだ時、素直になれば大丈夫とエールを送ったのは自分だ。
今だって、まさにその時じゃないか。
沙那が覗き込むと、瀬名が頷きながら徐々に顔の角度を上げた。
リビングテーブルに伸ばされた瀬名の手。
机上の携帯を掴むと、電話帳の彼の欄をディスプレイに表示させた。
…出てもらえるだろうか。
「………」
「メールでも来てた…?」
思い立つや否や携帯を手にしたものの、握ったまま微動だにしない瀬名に沙那が問う。
瀬名は首を横に振ると、パタリと携帯を閉じた。
「…やっぱり、電話じゃなくて直接伝えた方がいいと思って。
今日はもう遅いし。明日会って、ゆっくり話をして、謝ろうと思う」
「そっか。そうだね、会える距離ならその方がいいよ。応援してる」
「ありがと沙那」
言われて、はにかむ表情を見せる沙那だ。
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