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「しかしただでさえ顔が女っぽいのに、そうやって涙浮かべてると余計女々しいな」
「…変な気分になったりして?」
「なるか!っていうかどんな気分だよ。気持ち悪い」
どうやら中性的な見た目は自覚はしているらしい親友から、上目遣いの視線が投げられる。
水上は顔をしかめるが津田は動じやしない。
かえって浮かんだのは、目尻に溜まった涙を拭いながらの笑みだ。
「冗談だって。
でも水上、
『この上ない心地好さ』は北川さんに使ってよ。
彼女を差し置いて僕がその言葉を貰うのは、ちょっと恐れ多いな」
「…そうだな」
登場した彼女の名に、二人を纏う空気が再び重くなる。
津田はふと立ち上がり、やがて戻って来た彼の両手には水の入ったグラスが握られていた。
「水上…。北川さんさ、結構遠慮なく言われてる。
薫さんの言葉に相当傷付いてるよ」
「…相談に乗ってもらってたって言ってたな。
大体瀬名から聞いてるのか?」
津田はグラスを置くと、瀬名が教唆された内容の列挙を始めた。
「ねぇ、そこまで言っちゃう薫さんて何が目的なの」
たとえ水上の父親と顔見知りだったとしても、だ。
瀬名への教唆は客観視しても陰湿で、悪意ある行為としか思えない。
憤る津田から一通り聞き終えた水上は「あの人は多分…」とまで発するが。
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