始まりからもう一度。

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「不安にさせてごめん。俺が最初からきちんと話していれば、瀬名は不必要に不安にならなくて済んだのに」 瀬名の首が横に振り動く。 ―――違う。彼のせいなんかじゃない。 自分の方が弱かった。信じる強さを持てなかった。 薫が意図的な誘導を謀っていたとしても、彼を信じる強い心があれば、揺れずにはね除ける事が出来たのだから。 「私こそ、鷹洋さんを疑ってしまって…彼女なのに、信じなきゃいけなかったのは鷹洋さんの言葉なのに、私…」 言いたくても言えない苦悩は、誰より分かっていたはずなのに。 言えない理由を欺瞞に結び付けた。 「鷹洋さんは、私が隠していた部分を温かく受け入れてくれたのに…私は、言えなかった事を疑ってかかって…」 ごめんなさい。 震えた声でそう謝罪した瀬名が頭を下げると、互いの距離が近付いた。 どちらかが手を伸ばせば、直ぐに相手の体に触れられる距離だ。 水上はさらに姿勢を低くして、瀬名を覗き込む。 「顔を上げて瀬名。俺が言葉足らずだったからいけなかったんだ」 「私が信じてなかったから」 「俺が、瀬名に昔の事を訊かれていつもごまかしてたから」 「私が…」 反論しようと瀬名が顔を上げると、間近に迫った水上の顔が飛び込んだ。 端正な甘いパーツの中でもとりわけ印象的な、長い睫毛に囲まれた瞳が小さく揺れている。 視線をかち合わせたまま、時間だけが流れた。 どれぐらい経てからだろうか。 瀬名がそっと瞼を下ろしたのを合図に、彼女の唇を水上が塞いだのは。
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