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「車狭いけどゴメンね」
「いえっ、とんでもないです!
それにこの車、内装は黒一色で格好良くて、なのに外装は可愛いベージュ色でどっちも併せ持ってる感じが津田さんぽいっていうか」
「あはは、いいね、その感性。
さてと、北川さんちが先かな。ナビ頼むねー」
「あっ、ハイ、分かりました」
(そっか、水上さんとこに荷物全部持ってく訳にはいかないもんね)
「すみません。それじゃまず、次の信号は右で、そのまま真っ直ぐでお願いします。
あの、どうしてこんなに…親切にしてくれるんですか?」
瀬名が思い切って尋ねると、運転席の津田はバックミラー越しに彼女を一瞥して笑みを溢した。
「どうしてだと思う?」
(って訊かれても…!)
逆に質問し返されてしまった瀬名は、うーんと首を捻る。
「私が水上さんの知り合いだから、とか…ですか?」
「そう。んでもって、水上の好きな人だから」
「―――っ!!」
(…な、何で…)
「あ、水上が暴露した訳じゃないよ。
ただ言葉の節々や態度で、なーんかそんな感じがしたんだよねー」
勘とはいえ、告白された事も、その前後の出来事も、ましてや自分が抱いている想いさえも全て知られているような。
津田の持つ独特の雰囲気から、彼があらゆる事柄を見透かしている気がして、瀬名は顔を赤くして俯く。
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